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Mの山を登る Climbing Mt. M その2

2016.03.26

~少しずつ登り続けて、4合目~

 

年明けから春に向けて、『Mの辞典』の制作は、装幀担当の望月克都葉さんを中心に、着々と進められておりました。克都葉さんの作業も、私同様、はさみと糊の切り貼りが主流です。PC上のデータより、断然わかりやすいのです。克都葉さん、美篶堂の上島明子さん、私の3人は、メールで、東京・神保町で、打ち合わせを重ね、それぞれの心のなかで、『Mの辞典』が大きく膨らんできています。

1月末、望月通陽さんが、表紙・裏表紙の作品を染め上げてくださいました。最初のプランでは、白い用紙に大きく「M」と書かれた表紙だったのです。それがなんと、深い濃い色、印象的な絵の作品になって現れました。本が完成してこの表紙が並ぶことを考えたら、ドキドキしてきました。「2合目到達!」とつぶやきました。

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2月半ば、追加の文章が届きました。紙版画の作品集『Mの辞典』は全部で24点です。雑誌「銀花」に掲載された作品9点には文章がついているのですが、それ以外は版画作品のみでした。追加の文章を書いてくださいとお願いして、そのことで半年間制作が留まってしまった経緯があり、私はあきらめていました。文章のないページをどのように埋めようか、紙の質感で余白を美しく見せるのか、作品タイトルの書き文字を大きくレイアウトしてもらうのか… そんな折に克都葉さんから「突然ですが、原稿をお送り致します。望月氏が、束見本を見ていて、やはり文章が全部に有った方がいいと判断して一生懸命書きました。」というメールが届いたのです。添付ファイルの原稿を読み進めるうちに、視界が開けていくような、山道で霧が晴れていくような気持ちになりました。以前は「書こうとしても無理だった」と言っていた望月氏が、私たちの取り組みと具体的な割付を見て、一気に書き上げてくださったのです。3合目の景色は晴れやかでした。

3月半ば、上島明子さんと私は、静岡の望月邸に向かいました。三島印刷所の遠藤孝さんとの打ち合わせのためです。克都葉さんのレイアウトは殆ど完成していて、帯までデザインが済んでいました。本のサイズも決定し、用紙も候補が絞られ、製本プランも決まりました。驚いたのはすでに「あとがき」が完成していたことです。最初出版に乗り気でなかった気持ちの変化を、かろやかな文章にまとめてくださっていました。「もうこれで“Mの山”の5合目かも」と言ったら、上島明子さんに「まだまだ先は長いですよ」と言われました。そうですね。4合目に訂正です。

ここから先の山道は、三島印刷所・遠藤孝さんを先頭に登ります。最良の道を選べるように、私も気を引き締めて歩を進めます。

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【スタッフ紹介】その1 装幀 望月克都葉さん Madame Mochizuki

望月通陽さんのパートナーの望月克都葉さんは、普段は望月氏のマネージャーさん的な働きで、創作活動を支えていらっしゃいます。望月氏と克都葉さん、おふたりの私設書局「THE CALYPSO PRESS」では、装幀だけでなく、製本家として、繊細で斬新な作品を発表されています。雑誌「銀花」には、その作品も掲載されています。

『Mの辞典』の制作は、そもそもが克都葉さんの発案、そして「愛」が出発点です。ご夫婦の大切な作品の発行元として、ゆめある舎を選んでいただけたこと、光栄です。