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~少しずつ登り続けて、4合目~

 

年明けから春に向けて、『Mの辞典』の制作は、装幀担当の望月克都葉さんを中心に、着々と進められておりました。克都葉さんの作業も、私同様、はさみと糊の切り貼りが主流です。PC上のデータより、断然わかりやすいのです。克都葉さん、美篶堂の上島明子さん、私の3人は、メールで、東京・神保町で、打ち合わせを重ね、それぞれの心のなかで、『Mの辞典』が大きく膨らんできています。

1月末、望月通陽さんが、表紙・裏表紙の作品を染め上げてくださいました。最初のプランでは、白い用紙に大きく「M」と書かれた表紙だったのです。それがなんと、深い濃い色、印象的な絵の作品になって現れました。本が完成してこの表紙が並ぶことを考えたら、ドキドキしてきました。「2合目到達!」とつぶやきました。

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2月半ば、追加の文章が届きました。紙版画の作品集『Mの辞典』は全部で24点です。雑誌「銀花」に掲載された作品9点には文章がついているのですが、それ以外は版画作品のみでした。追加の文章を書いてくださいとお願いして、そのことで半年間制作が留まってしまった経緯があり、私はあきらめていました。文章のないページをどのように埋めようか、紙の質感で余白を美しく見せるのか、作品タイトルの書き文字を大きくレイアウトしてもらうのか… そんな折に克都葉さんから「突然ですが、原稿をお送り致します。望月氏が、束見本を見ていて、やはり文章が全部に有った方がいいと判断して一生懸命書きました。」というメールが届いたのです。添付ファイルの原稿を読み進めるうちに、視界が開けていくような、山道で霧が晴れていくような気持ちになりました。以前は「書こうとしても無理だった」と言っていた望月氏が、私たちの取り組みと具体的な割付を見て、一気に書き上げてくださったのです。3合目の景色は晴れやかでした。

3月半ば、上島明子さんと私は、静岡の望月邸に向かいました。三島印刷所の遠藤孝さんとの打ち合わせのためです。克都葉さんのレイアウトは殆ど完成していて、帯までデザインが済んでいました。本のサイズも決定し、用紙も候補が絞られ、製本プランも決まりました。驚いたのはすでに「あとがき」が完成していたことです。最初出版に乗り気でなかった気持ちの変化を、かろやかな文章にまとめてくださっていました。「もうこれで“Mの山”の5合目かも」と言ったら、上島明子さんに「まだまだ先は長いですよ」と言われました。そうですね。4合目に訂正です。

ここから先の山道は、三島印刷所・遠藤孝さんを先頭に登ります。最良の道を選べるように、私も気を引き締めて歩を進めます。

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【スタッフ紹介】その1 装幀 望月克都葉さん Madame Mochizuki

望月通陽さんのパートナーの望月克都葉さんは、普段は望月氏のマネージャーさん的な働きで、創作活動を支えていらっしゃいます。望月氏と克都葉さん、おふたりの私設書局「THE CALYPSO PRESS」では、装幀だけでなく、製本家として、繊細で斬新な作品を発表されています。雑誌「銀花」には、その作品も掲載されています。

『Mの辞典』の制作は、そもそもが克都葉さんの発案、そして「愛」が出発点です。ご夫婦の大切な作品の発行元として、ゆめある舎を選んでいただけたこと、光栄です。

 

~麓で停滞、そして頂上を仰ぎながら1合目へ~

 

『くだもののにおいのする日』が完成してホッとしているところに、次の本の企画が風のようにひらりと舞い込んできました。20年以上前に、望月通陽さんが制作した「紙版画+文章」の作品が、雑誌「銀花」に掲載されたのみで書籍としてまとめられていない、それをゆめある舎で、ということでした。望月克都葉さんからのご提案で、大変光栄なものでした。

タイトルは……『Mの辞典』……なんて魅力的なタイトル!

6月には静岡の望月通陽さんのお宅を訪ね、紙版画の実物を拝見。「銀花」には載っていない作品も多くあり、1冊分に充分な分量でした。これはもしかしたら年内に発行可能かもしれない、クリスマス時期に発売出来ればプレゼントにぴったり、とひたすら浮かれておりました。

ところが、そのように都合よく物事が進むわけもありません。作品を生み出した作家にとっては、古い作品を今改めて発行する、ということは軽い考えで受け入れられることではありません。今現在の作品とは異なる若いころの作品と、もう一度向き合い、手を加えるのか、そのまま送り出すのか。常に新しい作品作りに忙しくされている望月通陽さんに、はっきりとした方針をお伝えするだけの、深い考えもなければ度胸もない私は、どうしたらよいのか分からないまま、半年近くを過ごしてしまいました。

11月、美篶堂の上島明子さんをお誘いして、大分の「望月通陽ミュージアム」に行きました。夜は、望月通陽さんの作品とたっぷり出会える宿「柳屋」に泊まりました。2日間、望月通陽さんの作品とその雰囲気を身体中で感じて過ごしました。そして、何が悪かったのかがわかりました。

そもそも私に、作品に対する敬意が足りなかった、ということです。素晴らしい作品が目の前に現れて、わぁよかった素敵、と浮かれているばかりでした。もし新作を作って頂くとしたら、真剣に頭を下げてお願いしているはずです。昔の作品だということに甘えていて、ちゃんとお願いすらしていなかったことに気が付きました。

12月、箱根で展示の搬入をしている、望月通陽さんを訪ねました。「どうか『Mの辞典』を出版させてください」と言うと、ちょっと照れたようなご様子で「お任せします」と答えてくださいました。

嬉しい!とても嬉しい!ようやく『Mの辞典』発行に向けて、第1歩を踏み出すことができます。

作品のコピーと、ワードで打ち直した文章を、一気に切り貼り。雰囲気を伝えるためのたたき台です。ひと晩で作って、装幀担当の望月克都葉さんに郵送。ご覧になった望月克都葉さんから、どのような装幀プランをいただけるのか、期待が高まります。本作りはまるで山登り。1歩ずつをしっかりと踏みしめて登って行くと、いろいろな景色が見えてきます。美しいMの山の頂上を目指して、ようやく1合目まで登ることができました。麓で停滞して、ぐるぐる悩んでいた日々が嘘みたいに、幸せです。次回は、Mの山を一緒に登るスタッフをご紹介いたします。

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友人から時折うわさを聞いていた「百町森」を、ようやく先月訪ねることができました。

9月に「詩は音楽に恋しているか」というタイトルの、谷川俊太郎&谷川賢作コンサートを、主催してくださるんです。ちょうどそのチラシが完成したタイミングで、伺うことができました。

 

俊太郎さんの本が集まっているコーナーです。

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本の売り場は、その「ぎっしり感」がすごいです。選ぶのに時間がかかりそう…

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おもちゃの売り場は、もっと「ぎっしり」詰まっています。

選ぶのはますます時間がかかりそう…

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親子で遊べる、こんなすてきなお部屋もありますよ。

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わが子が小さかった時に、近所にこんな場所があったらよかったなぁ。

イベントもいろいろあって、親も子も楽しめそうです。いいなぁ。

ブルガリアが大好きな私は、少しずつブルガリア語も勉強しています。

ところが、辞典がどっしりと重くて、表紙が厚くて固くて、おまけにブックケースにはいっています。もともとが勉強嫌いなんですね。そんな辞典を使うのがおっくうで…

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「そうだ、美篶堂に頼めばなんとかなるかも」と気がついてお願いしたところ、こんなすてきな、赤いソフトカバーになりました。ブルガリアと言えば、赤のイメージですからね。

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まだ受け取っていませんが「柔らかくてよい感じ」ということです。いかめしい辞典がかろやかな赤い本になり、うきうきと勉強できそうです。

ひな祭りの夜、都内のブルガリアレストランにて、松井啓子さんご夫婦を囲んでの、お祝いの食事会をいたしました。「くだもののにおいのする日」の制作関係者と、「ゆめある舎HP」のスタッフで、総勢10名の小さな集まりでしたが、予想以上に盛り上がり楽しいひと時となりました。

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最後に全員で記念撮影。ブルガリア民族衣装の店員さんにも入っていただきました。

「くだもののにおいのする日」の完成の嬉しさを心に刻む、夢のような夜でした。

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